「おくのほそ道」出羽路での歌仙

     
 柳の清水の芭蕉句碑  本合海の芭蕉と曾良像  最上川(本合海)
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 C 歌仙 「御尋に」  (曾良俳諧書留)   新庄   風流亭

六月二日、新庄の風流亭(渋谷甚兵衛)での興行。『雪まろげ』『奥細道拾遺』などに収める。

御尋に我宿せばし破れ蚊や                 風流

はじめてかほる風の薫物(たきもの)          芭蕉

菊作り鍬(くは)に薄(すすき)を折添(をりそへ)  孤松

霧立(きりたち)かくす虹のもとすゑ       ソラ

 

御尋に我宿せばし破れ蚊や                 風流
 折角お尋ねいただいたのにまことに狭苦しい所で、蚊帳も破れておりますと恐縮している。発句と脇とが逆になった格好である。例えば、発句に芭蕉の「はじめてかほる風の薫物」というのがあって、亭主が折角お尋ねいただいたのに破れ蚊やで、と挨拶するのが普通であるが、ここではそれが逆になっている。時によって臨機応変、亭主が発句を詠んで、客の方が脇になることもある一例。

はじめてかほる風の薫物                  芭蕉
 夏になると南の風が吹き、それを「風薫る」と言い慣わしている。その「かほる風」がさわやかに吹き込んで、座には香が薫きしめてある。「はじめてかほる風の薫物」というのはその両方の薫りを溶かし合った表現である。間題は「はじめて」にある。芭蕉はこの「はじめて」という言葉にどういう意味を込めようとしたのか。道中、梅雨時の雨にも悩まされ、漸くほっとしているところ。そういう気持の「はじめて」が主でないかと思われる。ここへ来てはじめてさわやかな夏風の肌ざわりを感じ、薫きしめてある香も馥郁(ふくいく)としてまことに快いということでしよう。

菊作り鍬(くは)に薄(すすき)を折添(をりそへ)て 孤松
 菊作りをしている人が鍬に芒(すすすき)を折って添えている。前が匂いの句だから、その匂いから菊が出てきたと考えられる。

霧立(きりたち)かくす虹のもとすゑ          ソラ
 虹が懸かって、その二つの脚を元と末と見ている。そしてこの虹の根の所が霧に隠れている。